Vol.01 催眠とスポーツ選手

最終更新日:2020年2月1日

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催眠状態を上手に使うスポーツ選手

── 催眠療法について学んでいく中で、私たちは普段の生活で潜在意識と顕在意識を行ったり来たりしている、また催眠状態というのは全然特別なものではなくて、日常的に知らない間に催眠状態に入っている、ということを教えていただきました。

以前お聞きして興味深かったのが、スポーツ選手も催眠状態を上手に使って成果につなげていて、成果を出してる方はその催眠状態に上手く入っているっていう伝え方をされたんですけれども、先生の中で最近、「あっ、この選手は今催眠状態に入ってプレイしてるなぁ」と思われた試合とかスポーツとかってありますか?

萩原:最近では、渋野選手が全英女子オープンで優勝しましたよね。メジャーで日本の女性が勝ったのは何十年ぶりですよね。あの試合をずっと見ていたんですけれども、渋野選手はホールからホールに移動する間に、ギャラリーの人とハイタッチしたりとかしながら歩いているんですよね。今まで日本人というかゴルフの選手でもそういうことをする人あまりいなかったんじゃないかなと思うんです。

観客と選手は別々だし、もう自分は集中しているから周りに気を散らしたくない、という風なイメージが一般的にあるんじゃないかと思うんですね。それが、ああいう風にハイタッチとかしながら歩いていて、今度自分が打つ時になると集中して、で打った後またニコニコしながらキャディーさんと話をしたりしながら歩いていたり。コーチが「今あなたのことカメラが撮ってるよ」とか注意すると、カメラの方を向いてクチャクチャ食べたりとかしてるわけです。普通優勝争いしてる人が、キャディーさんと話をしたりとかカメラにサービスするっていうことはあんまりやらないんですよね。

── そうですよね。まず何かをあからさまに食べているっていうっていう光景は見ないですもんね。

緊張していると体の筋肉も緊張する

萩原:あんまり見ないですし、逆にそういうことやっていると気が散ってしまうんじゃないかとか思いがちなんですけど、ただ緊張をずっとしている状態っていうのは、なかなかそれを保つことは難しいですし、それで緊張していると体の筋肉もやはり緊張してくるわけですよね。だから、緊張したりあるいは緩めたりっていうことを、とても上手にやっていたと思うんですよね。

普段なら寝てしまうんですけど、たまたまあの日は起きていて。大体日本の選手がゴルフで最終日にメジャーでかなりいい線いっていると、だんだん落ちていってしまって、終わりの方になるとだんだん成績が下がっちゃうんですけど、渋野さんはずっと優勝争いをしていたんで、寝ようと思っても目が離せない状態だったんですね。思い切って攻撃的なゴルフをしますし、冒険を恐れないっていうか。本当にびっくりしたし、あれをライブで観られたっていうのはなんかすごいラッキーだったなって思ったんですけどね。

やはり力を入れるところとリラックスするところ、そこがとても上手じゃないかなと思うんですね。彼女がどこでそれを身につけたのか、あるいは先天的に持っていたのかはよくわかりませんけど、堂々とコースの中でクチャクチャ食べたりしている、っていうのはあんまり見る光景ではないですよね。合間に休んでる時にはよく食べたりするんですけどね。そういうちょっと型破りなところが、やっぱりある意味での精神的な強さというか、気分転換が上手じゃないかなと思いますね。

フロー状態は催眠状態と同じ

──先生、スポーツ選手で飛びぬけた活躍をされる方を分析する時に、あの選手はゾーンに入っているとかフロー状態だとか、そういう言葉を聞くことがあるんですけれども、まさに催眠状態に入っている、同じような意味でとらえていいんですか?

萩原:はい、全く同じ意味だと思いますね。フローは、まさに潜在意識というかそういう状態ですよね。

──潜在意識ですから自分で意識していない意識、その状態でいるときが逆に、先生がおっしゃったように筋肉が緊張してないからリラックスした状態で体を動かせるっということですか?

萩原:そうですね。プロの選手って、もうパターとかはすごい回数をやっている訳ですよね。それでも、実際に優勝がかかったりとかっていう時には、渋野さんも日本に帰ってきた時に、パターを打つ前に手が震えた、ってこうおっしゃっている訳ですよね。ゾーンに入るっていうのは簡単なようで結構難しいんだと思うんですね。

──そうなんですね。

儀式をゾーンに入るきっかけにする

萩原:ゾーンの入り方ですが、例えばイチロー選手、あの方はバッターボックスに立ってバットを立てて構えるんですね。それが儀式なんですね。そうすることによって無の状態というか自然体というか、催眠状態に。それを合図としてバッターボックスに立って、という一つの儀式ですね。それがまさに自己催眠に入っていくということだと思うんですよね。習慣化していると言いますかね。

──自分自身で潜在意識、顕在意識の行ったり来たりのきっかけを、自分自身できっかけを作って行き来できるようにしているんですね。

萩原:そうですね。

渋野選手はリラックスと集中の切り替えが早い!

──渋野選手の場合だと、ラウンドを変わる時に、キャディーさんとお話したり観客と話したりあとはお菓子を食べてみたり。それは催眠の状態でいうと、その時はもうもちろん催眠に入っていない状態っていうことですか?

萩原先生:そうですよね。リラックスしているわけですよね。ずっと催眠状態を保っていくっていうのは、18ホールとかは難しいわけです。どこで息を抜いて行くかっていうことですけど、渋野選手は切り替えがすごく早いんだと思うんですね。リラックスして、ゴルフのことはちょっと考えないで観客と触れ合ったりとか、何か食べたりとか、キャディーと話することによって、瞬間的に緊張状態から解放するっていうかですね。そして実際に打つ時には集中する、という切り替えがすごい上手なんだと思うんですよね。

潜在意識・顕在意識を理解し、
日常生活にうまく使っていきましょう

──なるほど。では、スポーツ選手もそうですけど、私たちが普段生活するにあたっても、うまく潜在意識と顕在意識を行ったり来たりできるようになると、日々の生活がしやすくなるっていう風にいえますか?

萩原先生:そうですよね。ですから、自分が集中するときは何かに集中するし、リラックスする時はリラックスするということ。渋野選手がどのくらい顕在意識・潜在意識を理解しているかはわかりませんけど、私たちは催眠を学ぶことによって、潜在意識・顕在意識ということを理解すること、そしてそれを日常生活に使っていくことができる。それがやはり催眠を学ぶ一つの大きな利点だと思いますね。

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